経皮吸収は医療や美容、ヘルスケアといったさまざまな分野で活用されており、塗るだけ(肌に塗布するだけ)で体に作用するという手軽さから、クリームや入浴剤での使用が広がっています。
しかし、「どうやって体内に吸収されるのか?」「どうすれば吸収率を高められるのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、経皮吸収の基本原理や3つの吸収経路、吸収率を最大限に高める具体的な方法をわかりやすく解説します。
カラダのどの部位にどう塗るのがいいかで迷っている方に、科学的な知見をもとにしてお伝えするので、ぜひ最後までお読みください。
経皮吸収のメカニズム

経皮吸収の仕組みについて、以下の2つの基本的な概念を元にお伝えします。
- 経皮吸収の基本原理
- 経皮吸収されやすい成分とされにくい成分
経皮吸収の基本原理
経皮吸収の基本原理は、「皮膚を通して体内に成分が移行するプロセス」にあります。
どんなプロセスを辿るかの前に、まずは皮膚の基本的な構造を確認しておきましょう。
皮膚は1番外側に「表皮」、真ん中に「真皮」、1番内側に「皮下組織」という3つの層で構成されています。
3層のバームクーヘンのようなイメージですね。
このうち経皮吸収に関わるのは表皮のさらに外側にある「角質層」です。
角質層は、外部からの異物を防ぐ強力なバリア機能を持っています。
しかし、脂溶性(油に溶けやすいもの)や小さな分子などの一部の成分は、角質層を通過することが可能です。
こうして角質層を通過できた成分だけが、表皮→真皮→皮下組織→体内へと吸収されていくのです。
経皮吸収の概要についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も確認してください。
経皮吸収されやすい成分とされにくい成分
では、どんな成分が経皮吸収されるのか?
ここでは経皮吸収されやすい成分とされにくい成分について、それぞれ解説します。
【経皮吸収されやすい成分】
性質 | 成分名 |
---|---|
脂溶性が高い (油に溶けやすい) | ・CBD(カンナビジオール)・ビタミンE・カプサイシン |
分子量が小さい | ・ニコチン・カフェイン・ホルモン剤 |
皮膚に浸透しやすい | ・パンテノール(プロビタミンB5)・レチノール(ビタミンA)・ヒアルロン酸ナトリウム(低分子タイプ) |
CBDは大麻草に含まれる成分の一つで、リラックス効果や健康維持が期待できる成分です。
海外では医療用途としての研究が進み、日本でも健康・美容業界でサプリメントやオイルなどの形で利用される機会が増えています。
CBDについての詳しい記事はこちらです。


【経皮吸収されにくい成分】
性質 | 成分名 |
---|---|
水溶性である | ・ビタミンC・グルタチオン・クエン酸 |
分子量が大きい | ・ヒアルロン酸・コラーゲン |
イオン化しやすい | ・ビタミンC・クエン酸 |
ビタミンCとクエン酸は水溶性であり、かつイオン化しやすい成分であるため、より経皮吸収が難しい成分だと言えます。
こうした経皮吸収が難しい成分を体内に取り込むためには、以下のような方法が考えられます。
- サプリや食品などによる経口摂取
- 点滴・注射
- リポソーム化(脂質の膜で成分を包み、角質層となじみやすくする)
- ナノエマルジョン(微細な粒子にして、皮膚への浸透性を高める)
- パッチ技術(成分を密着させ、長時間かけてじっくり浸透させる)
そのため、成分や目的に応じて、最適な方法を選ぶことが重要です。
経皮吸収の3つの経路とは?

経皮吸収には以下の3つの経路があります。
<経皮吸収の3つの経路>
経路名 | 詳細 |
---|---|
付属器官経路 | ・毛穴や汗腺から浸透する経路・成分によっては、ここを経由して効率よく吸収される(例:ナノ粒子、CBDなど) |
細胞間隙(かんげき)経路 | ・細胞と細胞の隙間を通って浸透する経路・脂溶性・低分子の成分が通りやすい |
細胞実質透過経路 | ・細胞の中を通過する経路・ケラチンが多いため、水溶性成分も一部通れるが効率は低い |
なお、これら経皮吸収の3つの経路のうち、細胞間隙(かんげき)経路が最も主要な経路となります。
脂溶性や分子量の小さな成分が通りやすいため、多くの化粧品や外用剤はこの経路を狙って設計されています。

【やり方】経皮吸収を高めるための5つの方法

経皮吸収のメカニズムの大枠を把握したところで、ここでは経皮吸収を高める具体的な5つの方法を以下で紹介していきます。
- 皮膚の適切な部位を選ぶ
- 皮膚のバリア機能を整える
- 皮膚の血行を良くする
- 経皮吸収を高める成分を活用する
- 使用する製品の品質をチェックする
皮膚の適切な部位を選ぶ
経皮吸収率は、塗布する部位によって大きく異なります。
特に吸収率が高いとされるのは、陰部、顔、頭皮など、皮膚が薄く毛細血管が密集している部位です。
逆に、かかとやひじ、手のひらなど皮膚が厚い部位は吸収率が著しく低下してしまいます。
したがって、目的に応じて最適な部位を選ぶことで、成分の経皮吸収率を高めることが可能です。
部位ごとの経皮吸収率については、下記の記事で詳しく解説しているので、合わせてお読みください。
皮膚のバリア機能を整える
皮膚のバリア機能が乱れていると、成分の浸透に影響を与えることになります。
乾燥や炎症があると角質層が荒れ、吸収が不安定になるため、まずはスキンケアで皮膚の環境を整えるとよいでしょう。
具体的には、保湿を徹底し、洗いすぎを避け、皮膚表面のpHバランスを保つことが効果的です。
特に肌が荒れやすい方は、刺激の少ない保湿剤を使い、バリア機能をサポートすることで経皮吸収の安定性を高められます。
皮膚の血行を良くする
血流が良い部位は、成分がより効率的に全身に運ばれやすくなります。
また、温めることで血流が良くなり経皮吸収が高まる可能性については、海外の論文で以下のように示唆されています。
“the current body of literature suggests that heat exposure increases the in vivo dermal absorption of many drugs from transdermal or topical delivery systems.” 「現在の研究文献の蓄積によれば、熱への曝露は、経皮または外用製剤からの多くの薬剤の体内(皮膚)吸収を高めることが示唆されています」 引用:Heat effects on drug delivery across human skin|PubMed |
皮膚の血行を促進する方法としては、入浴、軽いマッサージ、温熱パックなどがあります。
エプソムソルトを使った入浴や入浴後にマグネシウム配合のバーム、クリームなどを使ってマッサージすることで心身のストレスをやわらげる効果が期待できるでしょう。


経皮吸収を高める成分を活用する
一部の成分には、経皮吸収を促進する働きがあります。
代表的なものに、オレイン酸、エタノール、ラウリル硫酸ナトリウム、ユーカリ油などがあり、これらは皮膚のバリアを一時的に緩めて浸透を助ける効果を持ちます。
ただし、ラウリル硫酸ナトリウムのような成分は敏感肌の方には刺激が強すぎることもあるため、製品の使用前には成分表示を確認し、自分の肌質に合ったものを選ぶことが大切です。
使用する製品の品質をチェックする
最後に気をつけたいのが、使用する製品そのものの品質です。
成分の純度が高く、安定性がある製品でなければ、肌への吸収が妨げられる可能性があります。
また、製造過程での安全性や、防腐剤・添加物の有無も確認するべきポイントです。
特にマグネシウムやCBDなど有効成分が配合された製品は、信頼できるメーカーのものを選ぶことで、より高い効果と安全性を両立できるでしょう。

クリニックにて。
カナダでは緯度が高いため、特に冬場には乾燥肌に悩む方が多く見られました。
これに対応するため、私は常に保湿効果のあるバームタイプのマグネシウム(肌の水分保持に効果的)や、入浴(エプソムソルトを使用)といった外用マグネシウムの使用を勧めていました。
さらに、バームタイプのマグネシウムをマッサージしながら塗り込む方法は、総じて良好な効果を示していました。
近年ではリポソーム化されたマグネシウム製剤も登場し、吸収性はさらに向上しています。
乾燥肌の方には、毎日全身を石鹸で洗うのではなく、3日に1回の頻度に留め、ワキの下やデリケートゾーンなどの部位のみを毎日洗うことも推奨していました。
これにより、皮膚の皮脂腺が過度に刺激されることを防ぎ、皮膚のバリア機能を保つことができ、マグネシウムの外用吸収にも効果的です。
まとめ:経皮吸収のメカニズムと経路を理解し、健康に役立てよう!
今回は経皮吸収のメカニズムや3つの吸収経路、吸収率を最大限に高める方法を解説してきました。
経皮吸収は、成分を体内に届ける有効な手段として医療や美容、ヘルスケアなど幅広い分野で活用されています。
経皮吸収の効果を最大限に引き出すには、適切な部位選びやスキンケア方法、成分の選定、製品品質など複数の要因を意識することが重要です。
いきなりすぐにそれらを理解することは難しいかもしれませんが、本記事の内容を参考に、日常の健康ケアや美容習慣に経皮吸収をうまく取り入れていきましょう!