マグネシウムは肌にさまざまな効果が期待できるとして、注目を集めているミネラルです。マグネシウムとヒアルロン酸生成の関係や、抗炎症・抗酸化作用について。また保湿作用や肌バリアへの効果など。海外論文を用いて詳しくお伝えしています。
マグネシウムのスキンケア効果とその理由
ビタミンやミネラルなどが肌に必要だということは多くの人が理解していますが、マグネシウムのスキンケア効果はまだ知らない人も多いようです。
マグネシウムはこれまで、日本ではあまり着目されて来なかった必須ミネラルのひとつですが、実は人間の体内に起こる約800種類以上の化学反応に関与しているとされ、その重要性が注目されはじめています。
マグネシウムは細胞内に存在するミネラルのひとつで、カルシウムや神経伝達物質の調整だけでなく、実はその保湿効果は古くから入浴剤などとしても取り入れられています。また、近年の研究ではヒアルロン酸生成の活性やアンチエイジング効果、アトピー肌やかゆみ肌などの改善が見られることもわかっています。
でも、現代の日本人はマグネシウム不足が懸念されています。令和元年の厚生労働省の調査によると、マグネシウムの推奨摂取量の
男性 | 約63% |
女性 | 約70% |
しか摂取できていないことがわかりました。
参照:厚生労働省
以下ではマグネシウムのスキンケア効果について、より具体的にお伝えしていきます。
また、関連記事ではマグネシウムの身体への効果について詳しくご紹介していますので、併せてご参照ください。
効果①保湿力
マグネシウムは保湿効果が高いことで知られています。その理由のひとつマグネシウムと必須脂肪酸にあります。実は、体内とマグネシウム率が低くなると、必須脂肪酸が不足する傾向にあるのです。
先ほどお伝えした通り、マグネシウムは約800以上の化学反応に関係していますが、もう少し詳しくお伝えすると、マグネシウムなどのミネラルは補酵素と呼ばれ、体内の酵素を活性化させる働きがあります。
体内のほとんどすべての化学変化には酵素が関わっており、そこには必須脂肪酸の生成、代謝、維持も含まれています。マグネシウムの働きの一つにはこの「必須脂肪酸に関わる酵素をサポート」も含まれるため、マグネシウムが不足すると酵素の働きが弱まって、結果的に肌の保湿や弾力性が失われることにつながるのです。
つまり、不足しがちなマグネシウムが補充されることで、肌にもともとそなわっている保湿力や弾力を取り戻すことにつながるというわけです。
効果②アトピー肌へのアプローチ
アトピー性皮膚炎は、慢性的な炎症性皮膚疾患であり、乾燥した肌、かゆみ、赤みが特徴です。マグネシウムは、その抗炎症特性により、アトピー性皮膚炎の症状を和らげるのに役立つと考えられています。
厚生労働省の調査によると、日本のアトピー性皮膚炎患者は年々増加しており、1984年~2020年で約100万人以上も増えています。
マグネシウムがアトピー性皮膚炎に与える影響について、世界中で研究がおこなわれています。Journal of Biomedicineで掲載されている研究によると、アトピー性皮膚炎および脂漏性皮膚炎の症状改善に役立つ可能性が示されています。
同研究では、5%の高濃度マグネシウムを局所的に使用した患者が、わずか4日間の治療で顕著な症状の改善がみられたと報告されています。
参照:Magnesium of Dead Sea Salts as a Key Factor for the Treatment of Seborrheic and Atopic Dermatitis: A Case Reporthttps://bioscmed.com/index.php/bsm/article/view/971
また、アトピー性皮膚炎には
- 抗炎症作用
- 皮膚バリアの強化
- ストレス低減
- 肌の保湿
なども関係しており、これらはマグネシウム不足を改善することで見られる肌への影響でもあります。
これらの効果については下記で詳しくお伝えしていきます。
効果③抗酸化活性を高める
マグネシウム不足に陥ると、
- 酸化ストレスに弱くなる
- 抗酸化作用を低下させる
という二つの観点で、身体が酸化ストレスに悪影響を受けやすくなってしまいます。
マグネシウムは細胞膜の安定化やDNAの修復に関与しており、マグネシウム不足によってこれらの機能が低下すると、細胞が酸化ストレスに対して脆弱になります。その結果、酸化ストレス(フリーラジカル)によって損傷した細胞(老廃物)が蓄積しやすくなるのです。
つまり、マグネシウム不足が起こると身体には酸化ストレスに悪影響を受けた細胞が増えるということ。変性した細胞はのちにがんやアルツハイマーを含む多くの生活習慣病を引き起こすとも言われています。
さらにマグネシウムは、抗酸化作用自体に関わる酵素の活性化にも必要だといわれています。マグネシウムが不足するとこれらの酵素がうまく機能せず、体内の抗酸化能力が低下することにつながります。バランスの取れた食事によるマグネシウムの適切な摂取は、健康的な抗酸化システムの維持に役立ちます。
効果④ヒアルロン酸生成の促進
マグネシウムが直接的にヒアルロン酸を生成するわけではありませんが、細胞機能やタンパク質の合成に関わっているため、間接的にヒアルロン酸の合成に影響を与えていると考えられます。
2021年12月に日本人の研究者によって世界有数の科学紙 International Journal of Molecular Sciences(訳:国際分子科学ジャーナル)にて発表された論文では遺伝的にマグネシウムチャネルの障害を持つ患者さんを調査しています。マグネシウムチャネルに障害がある患者さんは、皮膚バリアの損傷がみられるのですが、これまでそのメカニズムは解明されていませんでした。
でも、ヒトの角質細胞由来のHaCaTという細胞の実験で、細胞内の塩化マグネシウム濃度が上昇すると、ヒアルロン酸を合成する酵素(HAS)が増加し、ヒアルロン酸(HA)の生成も増加することがわかったのです。そのため、肌の細胞内のマグネシウム不足を補うことで、ヒアルロン酸の低下を防いだり、正常な生成を促すことが考えられます。
効果⑤炎症を軽減
効果④でお伝えした通り、抗酸化作用があるマグネシウムは炎症の予防や改善に効果が期待できます。
また、炎症性サイトカインと呼ばれる、炎症に影響を与えるタンパク質の種類を抑制する働きがあると言われています。
2023年の研究によると、マグネシウム欠乏症は炎症性サイトカインの増加と関連しているとし、全身の炎症を悪化させる可能性すらあると示唆しています。
ニキビや吹き出物、肌の乾燥やその他多くのトラブルは、肌自体はもちろん、体内の炎症にも反応して現れるもの…そのため、肌はもちろん体内の炎症も抑えることが大切です。
効果⑥肌バリア機能UP
ここまで、マグネシウムの抗酸化作用や抗炎症作用などについてお伝えしてきたため、すでに肌バリア機能を高める作用について予想できている人も多いのではないでしょうか?
さらにマグネシウムは細胞分裂と成長に重要な役割をになっており、健康な肌の状態を保つサポートをしています。特に、細胞分裂頻度を調整すると言われており、体内で適切なマグネシウム濃度が保たれることによって、細胞分裂が促進されることが観察されています。マグネシウムは細胞分裂サイクルにおいて重要な役割を果たしていることを示しています。
参照:Magnesium ions in yeast: setting free the metabolism from glucose catabolite repression
効果⑦アンチエイジング
- ヒアルロン酸生成を促す
- 細胞分裂と成長を促す
- 肌を保湿する
- 抗炎症作用
- 抗酸化作用
- バリア機能UP
などこれまでお伝えしてきたマグネシウムの効果は、すべてエイジングケアにもつながります。
ヒアルロン酸の生成や代謝、肌の保湿力やバリア機能などは年齢と共に低下していきます。また、年齢問わず体内の炎症反応を高めたり酸化ストレスが過剰にかかる生活習慣や食生活をしていることでも、肌年齢は上昇してしまします。
マグネシウムを充分に補って置くことで、身体の内側から肌のアンチエイジングが期待できるということなのです。
効果⑧UVケア
マグネシウムは紫外線をブロックする作用はありませんが、間接的に日焼け対策歳て利用することができます。
乾燥した肌に紫外線が当たると、しみやしわ、そばかすなどができやすくなり、保湿されている肌に比べダメージも大きく修復しにくくなります。
ヒアルロン酸生成に関与し、保湿効果が期待できるマグネシウムを塗った後にUVケア製品や日焼け止めを塗ることで、紫外線による肌へのダメージを最低限に抑えることができます。
また、紫外線は体内の酸化ストレスや炎症を高めることでも知られています。ただし、日光はビタミンDの生成を促したり、セロトニンの分泌にも影響を与えており、また、自律神経などにも関与しています。そのため、体内にも充分なマグネシウムを摂取しつつ、適度な日光浴を楽しみましょう。
スキンケアにマグネシウムを使う3つの注意点
これだけさまざまな効果が期待できるマグネシウムですが、スキンケアに取り入れる際には、注意点があります。今回は特に重要な3つの注意点をご紹介していきます。
注意点その①ひりひりする
マグネシウムは実は刺激の強い成分としても知られています。特に経皮に塗るタイプのマグネシウムは、あまりに高濃度すぎたり、肌トラブルがある状態に使用すると
「ひりひりして使えない」
という人も多いよう…特に顔などに分布して染みたりすると、しみの原因にならないか心配ですよね?
マグネシウムは高濃度だからと言って効果があるわけではありません。マグネシウムが細胞に取り込まれる上限は決まっているため、多く摂ったからと言ってすべてが細胞に取り込まれるわけではなく、不要なものはただ排出されるだけなのです。
そのため、マグネシウムをスキンケアに取り入れる場合には、濃度よりも肌への刺激を考慮しましょう。口コミをチェックすることはもちろん、購入したら顔に塗る前に、腕の内側などでパッチテストをおこなうのがおすすめです。
注意点②お腹がゆるくなる
マグネシウムというと下剤を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?便を柔らかくするために病院などでも処方されるマグネシウム。実は吸収されにくい成分としても知られています。
ただし、下剤に使われる酸化マグネシウムはそもそも細胞に吸収されにくい性質があるため、吸収されずに腸まで届くことで、腸内の便に水分を含ませることができるという性質があります。
つまり、体内にもしっかりマグネシウムを届けたい場合には、細胞まで届く構造や吸収されやすい製造方法、もしくはマグネシウムの種類を選んで取り入れる必要があるのです。
下記の記事では、サプリメントに用いられることの多いマグネシウムの種類を詳しくご紹介しています。ぜひ併せてご参照ください。
注意点③継続する必要がある
マグネシウムはその他ビタミンやミネラルと同じように、毎日消費されるため、都度摂取する必要がある栄養素です。また、一度や数日だけマグネシウムを取り入れても、細胞は簡単には変化しません。
食事やサプリメント、スキンケア製品から、継続的にマグネシウムを補うことを意識してみるようにしましょう。
また、毎日継続する際には、添加物や不純物が含まれている製品はおすすめではありません。できる限り身体にやさしく、品質の高い製品を取り入れましょう。
マグネシウムを摂り入れる方法
マグネシウムを取り入れる方法は大きく分けて2つ。
- 経皮摂取
- 経口摂取
です。
肌に塗ったり、湯舟にマグネシウムを入れて入浴したりする方法が経皮摂取。食べ物やサプリメントでマグネシウムを補うのが経口摂取となります。
経皮摂取は肌や筋肉など、部分的なトラブルの改善に取り入れられることが多く、経口摂取は身体やメンタル、睡眠などのお悩み改善に重要です。
経口摂取と経皮摂取はどちらか片方ではなく、どちらも適切に取り入れる方法が好ましいとされています。
スキンケアは肌質改善などの目的だと、経皮吸収だけでいいと感じることもあるかもしれませんが、体内の炎症や酸化ストレスが、肌荒れや年齢肌を引き起こす根本原因となっているため、経皮・経口どちらの摂取方法も取り入れてみるのがベターです。
まとめ
今回はマグネシウムの肌への効果について、徹底検証してみましたがいかがでしたでしょうか?さまざまな論文でもその効果が発表されており、今後日本でも取り入れられることが増えてると予想されています。スキンケア方法に迷っていたり、なかなかお悩みが改善しないという人は、ぜひ参考にしてみてください。
また、当サイトではマグネシウム不足のセルフチェックが可能です。「もしかしたら?」と思ったら、ぜひチェックしてみてください。