「疲れやすい」「疲れが取れない」そんなお悩み、もしかしたらマグネシウム不足が原因かもしれません。マグネシウムはエネルギー生成や慢性疲労症候群などにも関係しているとされ、近年注目を集めている必須ミネラルの一つです。
疲れの原因はマグネシウム不足かも?
現代社会では、多くの人が疲れを感じやすく、その原因は多岐にわたります。
日本でも年々疲労が慢性化している人増えてきており、特に40‐50代の女性には、疲労感が摂れず日常生活にも影響がでるほどの慢性疲労症候群と診断される人も多くなっています。
そしてマグネシウムもまた、女性ホルモンの減少が激しい40‐50代で失われやすくなります。
この年代ではエストロゲンとプロゲステロンといったホルモンのレベルが急激に変化します。エストロゲンの減少は、骨の健康やカルシウムの代謝に影響を与えるだけでなく、マグネシウムの吸収や利用にも影響を与え、マグネシウムの体内利用効率が低下することが知られています。
マグネシウムはこの年代以外にも、若い世代の現代人は食事からマグネシウムが摂取しにくくなっているだけでなく、普段の食事がマグネシウムを消耗する原因になっています。精製された白い砂糖や小麦粉、白米、カフェイン、アルコール、添加物や農薬など、全てマグネシウムを消費する原因となります。
つぎの項目では、マグネシウムが具体的にどのような影響を体に与えているのか、詳しくご説明していきます。
エネルギーとATPについて
– 疲れの正体
「仕事が終わって帰宅すると、ソファーから動けなくなる」「運動や試合の後に疲れて立ち上がれない様子」などを“エネルギー切れ”などと表現することがありますよね?
これは一般的に「体を動かすエネルギー」が消耗したというニュアンスを含んでいますが、「疲れ」を感じるということは、単に体力の消耗という一言で表せるものではなく、体内のさまざまか化学反応が関わっています。
その中でもエネルギーと密接な関係があるのが、ATPです。
エネルギーとATP
エネルギー
体内の栄養素や化学物質が分解される際に放出される熱量のこと。
ATP
エネルギーを細胞に届ける役割をしている物質。
ATP(アデノシン三リン酸)は、細胞内のエネルギー通貨として知られていて、簡単にいうとエネルギーを細胞に届ける役割をしています。エネルギーは体を動かすだけでなく、消化や吸収、思考、休息、回復、睡眠など、ほとんど全ての活動や化学反応に必要とされています。
つまり細胞で構成されている人間は、生物学的プロセスでATPにエネルギーを運んでもらう必要があると言えます。
余談:エネルギー生成の経路
解糖系(Glycolysis)
場所: 細胞質
過程:グルコース1分子がピルビン酸2分子に分解されます。
この過程で、少量のATP(2分子)とNADH(電子を運ぶ分子)が生成されます。
酸素を必要としないため、無酸素条件でも行われます。
クエン酸回路(TCAサイクル / Krebs Cycle)
場所: ミトコンドリアのマトリックス(内膜内の液状部分)
過程:ピルビン酸はアセチルCoAに変換され、クエン酸回路に入ります。
アセチルCoAはクエン酸回路で完全に分解され、二酸化炭素、ATP(少量)、および高エネルギー電子を運ぶNADHとFADH2が生成されます。
電子伝達系(Electron Transport Chain)と酸化的リン酸化(Oxidative Phosphorylation)
場所: ミトコンドリアの内膜
過程:NADHとFADH2から供給される高エネルギー電子が電子伝達系を通過します。
電子の移動に伴い、プロトン(H+)が内膜を越えてミトコンドリア内膜と外膜の間に蓄積されます。このプロトン勾配がATP合成酵素を通じて再び内膜内に戻る際に、大量のATPが生成されます(酸化的リン酸化)。最終的に、電子は酸素と結合し、水が生成されます。
疲れの正体
エネルギー不足と表現される多くの場合、実際にエネルギーが不足しているというよりも、ビタミンやミネラル不足、睡眠不足、過度なストレスによる代謝への影響などが考えられます。
特にATPはビタミンB群やミネラルなどを利用して生成される物質のため、食事などから必須ビタミンやミネラルを充分に摂取できなかったり、生活習慣によって大量に消費されてしまうと、ATPが充分に生成される、正常にエネルギーが供給されなくなってしまいます。
すると、エネルギーが必要な消化吸収や代謝にも影響があり、悪循環となってしまうのです。
マグネシウムとATP
上述でお伝えした通り、ビタミンやミネラルがATP生成に必要ですが、その中でも必須ミネラルであるマグネシウムは日本人に不足しがちな栄養素です。
マグネシウムは、ATP生成のプロセス全体において重要な役割を果たしますが、特に上述のエネルギー生成経路では以下のような理由からマグネシウムが必要とされます。
グルコースの分解を進行させる酵素の活性化にはマグネシウムが必要です。
特に、ヘキソキナーゼやホスホフルクトキナーゼといった酵素は、マグネシウム依存性です。
マグネシウムは、クエン酸回路のいくつかの酵素の補因子として機能します。
特に、イソクエン酸デヒドロゲナーゼやアルファケトグルタル酸デヒドロゲナーゼといった酵素がマグネシウムを必要とします。
マグネシウムは、ATP合成酵素(ATPシンターゼ)に必須です。この酵素は、プロトン勾配を利用してATPを生成する際にマグネシウムを必要とします。
ATP自体も、マグネシウムと結合して安定化されます。ATPが細胞内で効果的に利用されるためには、マグネシウムが不可欠です。
マグネシウムの役割:論文
エネルギー生成経路だけでなく、ATPはマグネシウムと結合することで安定し、細胞内での利用が可能となることもわかっています。
マグネシウム補給がATP生成に与える影響に関する研究
この研究では、100名の被験者を対象に、マグネシウム補給がATP生成に与える影響を調査しました。被験者は無作為にマグネシウム補給グループとプラセボグループに分けられ、ATP生成を測定しました。
100名
被験者は無作為に2つのグループに分けられ、一方にはマグネシウムを補給し、もう一方にはプラセボを投与。
3ヶ月
マグネシウム補給グループはプラセボグループに比べてATP生成が有意に増加。プラズママグネシウム濃度が正常化し、ミトコンドリアの機能が改善されました。
この研究は、マグネシウム補給がATP生成を促進し、エネルギー代謝を改善する可能性があることを示しています 。
エネルギー生成だけじゃない!マグネシウム不足が疲れに影響している理由
マグネシウムは体内で約800以上の酵素反応に関与する必須ミネラルであり、その役割は多岐にわたります。それはエネルギー代謝以外にも、筋肉機能、神経伝達などの重要な生理機能において、マグネシウムは欠かせない存在です。
以下に、マグネシウム不足が疲労感にどのように影響するかを詳しく見ていきます。
参考:Magnesium in Man: Implications for Health and Disease
神経伝達の異常
マグネシウムは神経伝達物質の合成と分泌を調節する役割も果たします。特に、ストレスを緩和させる際に重要な役割を果たすGABA(ガンマアミノ酪酸)やセロトニンなどの神経伝達物質の生成に関与しているのです。
マグネシウムが不足すると、これらの神経伝達物質のバランスが崩れ、精神的な疲労感やストレス感が増大してしまいます。
筋肉の収縮と弛緩
筋肉の収縮と弛緩にもマグネシウムが必要です。カルシウムが筋肉の収縮を引き起こす一方で、マグネシウムは筋肉の弛緩を助けます。
マグネシウムが不足すると、筋肉が緊張しやすくなり、筋肉痛や疲労感が増加しやすくなります。
肝臓機能のサポート
マグネシウムは、肝臓での解毒酵素の活性化に必要です。肝臓は毒素を分解し、体外へ排出する役割を果たします。アルコールやカフェイン、薬の摂取や化学添加物、農薬など、体に摂っての毒素は肝臓で処理されるため、肝臓が疲れてしまうと毒素が溜りやすくなるのです。
下記ではマグネシウムとアルコール摂取についてさらに詳しくお伝えしています。
お酒好き必見!マグネシウムとアルコールについて!マグネシウム不足が慢性疲労の原因になる理由
「ただの疲れ」は放置しておくと、慢性疲労症候群という重度な疲れの症状が慢性化し、生活にも大きな影響を与え始めます。その原因は完全には解明されていませんが、マグネシウム不足が一因とされています。
マグネシウムと慢性疲労症候群の関連性
慢性疲労症候群の患者では、マグネシウムの血中濃度が低いことが多くの研究で示されています。
マグネシウム不足は、ATP生成の障害を引き起こし、エネルギー不足を招くため、慢性的な疲労感を引き起こす可能性があります。
また、神経伝達物質のバランスが崩れることで、精神的な疲労感やストレス感も増大します。
マグネシウムと慢性疲労症候群:論文
以下の論文では、慢性疲労症候群(CFS)の患者に対するマグネシウム補給の効果が調査されました。
被験者をマグネシウム補給グループとプラセボグループに分けて、二重盲検試験を実施
40名の慢性疲労症候群の患者
毎日370mgのマグネシウム酸化物
3ヶ月
マグネシウム補給グループは疲労感の有意な減少し、心理的ストレスの軽減したことがわかった。この研究は、マグネシウム補給が慢性疲労症候群の症状改善に有効である可能性を示しています。
参照:The Effects of Magnesium Supplementation on Subjective Anxiety and Stress-A Systematic Review
疲れ対策!マグネシウムの摂取方法とポイント
マグネシウムは以下の3つの方法で摂取できます。ただし、あらかじめマグネシウムを特性を知って置くことが大切なため、まずはポイントから抑えましょう!
マグネシウム摂取のポイント
①吸収率と種類を考慮
マグネシウムは実は吸収率が悪い成分として知られています。身近な例で例えると、便秘薬を想像してみてください。便秘改善のために処方されることが多い酸化マグネシウムですが、実は細胞内に吸収されにくいことで有名です。そして「吸収されにくい」という特徴を活かした便秘薬は、吸収されずに腸まで届くことで便を柔らかくするのです。
そのため、サプリメントなどでマグネシウムを摂取したい場合には、吸収率が考慮されている製品や、種類を選ぶようにしましょう。
下記ではサプリメントに使われるマグネシウムの種類と特徴を徹底リサーチしました。併せてチェックしてみてください。
【マグネシウムの種類】サプリで見かける10種類の効果と特徴②マグネシウム以外の栄養素
マグネシウムは基本的に食品から摂取できるのがベストです。でも、それにはマグネシウム以外の栄養素や成分を考慮する必要もあります。
例えばナッツ類にマグネシウムが多く含まれていますが、ナッツには豊富な脂質とタンパク質が含まれており、消化器官に負担がかかる食べ物でもあります。
また、海藻類は甲状腺や肝臓に疾患がある人が食べすぎると危険とも言われます。そのため、マグネシウムを意識した食品を選ぶ際にも、栄養バランスを重視する必要があります。
③品質や原材料
マグネシウムを豊富に含む食品でも、農薬や化学肥料が使われていたり、また、サプリメントも原材料や添加物が人体に悪影響な場合があります。これではいくらマグネシウムを摂取できたとしても、毒素が溜って体の疲れの原因となってしまいます。
そのため、品質や原材料に着目することは、マグネシウムでもその他栄養素に関わるものでも、とても重要なのです。
マグネシウム摂取方法
上記で注意事項をチェックしたところで、マグネシウムの摂取方法3選を確認していきましょう。
①食品から摂取
先ほどもお伝えした通り、海藻やナッツ類、玄米などにマグネシウムが豊富に含有されています。また、忙しい現代人にも嬉しいコンビニでも、マグネシウムが含まれる食品を見つけることができます。
下記ではマグネシウムが豊富なコンビニ食品リストを記載しています。
コンビニで買えるマグネシウム食品10選!手軽にマグネシウム補給!②サプリメントから摂取
サプリメントは手軽にマグネシウムを摂取できる手段のひとつとして、ヘルスケア先進国のアメリカなどではスーパーなどでも売られています。
ただし、吸収率を考慮して以内製品は下痢や胃のむかつきなどの副作用を及ぼす可能性もあるため、吸収率や種類、品質に考慮したサプリメントを選ぶようにしましょう。
③経皮から摂取
実はマグネシウムは古くから、エプソムソルトと呼ばれるお風呂に入れる製品などが使われてきました。
最近ではお風呂に入らなくてもより長く肌にマグネシウムをとどめて、簡単に使えるバームなどの製品も登場しています。
香りやテクスチャーなど、自分好みのものを選ぶことで、リラックスタイムを楽しみながらマグネシウムを摂り入れることができます。
まとめ
今回はマグネシウムと疲れに関して詳しくご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
「疲れを感じるな」と思ったら、マグネシウムを摂り入れて見るといいかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。