経皮吸収は、皮膚を通じて成分が体内に吸収されることであり、医薬品やスキンケア製品などを使用する際には、肌や耳にすることが多いかと思います。
しかし、経皮吸収は「本当に吸収されているのか?」「経皮吸収を狙ったスキンケアは効果があるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、経皮吸収の基本的な知識や医薬品・美容・ウェルネス領域における効果について、最新のエビデンス(論文)を紹介しながら、経皮吸収の効果について科学的根拠に基づいて解説していきます。
経皮吸収とは?

経皮吸収とは、皮膚を通じて医薬品や化粧品などの成分が体内に取り込まれることを言います。
私たちの体の表面にある皮膚は、本来、ばい菌や化学物質が簡単に体の中に入らないようバリアの役割を果たしています。
しかし、「湿布」や「鎮痛剤」などの一部の成分は、皮膚を通り抜けて血管まで届き、全身に広がっていくと言われています。
このように、皮膚から浸透して体内に成分が入ることを「経皮吸収」と呼びます。
経皮吸収についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
経皮吸収の効果

経皮吸収にはどのような効果があるのか、3つの観点で解説します。
- 経皮吸収の医薬品としての効果
- 経皮吸収の美容・スキンケアとしての効果
- 経皮吸収のヘルスケア・ウェルネス領域としての効果
早速、ひとつずつ見ていきましょう。
経皮吸収の医薬品としての効果
経皮吸収は、医薬品の投与方法として広く活用されています。
例えば、鎮痛薬(フェンタニルパッチ)やホルモン補充療法(エストロゲンパッチ)などです。
これらの薬は皮膚に貼ることで、有効成分が皮膚を通じて血流に吸収され、全身または局所に効果を発揮するもので、経皮吸収型医薬品と呼ばれます。
経皮吸収型医薬品のメリットは、経口摂取と比較して胃腸への負担が少なく、安定した血中濃度を維持できる点です。
また、一定の時間をかけて有効成分が皮膚から体内に吸収されるため、持続的な効果が期待できます。
具体的な医薬品としては、湿布や咳止め、禁煙補助剤などが挙げられます。
参考に、愛媛大学医学部附属病院が紹介している「経皮吸収型製剤一覧」をご覧ください。
引用:経皮吸収型製剤一覧|愛媛大学医学部附属病院
経皮吸収の美容・スキンケアとしての効果
美容やスキンケアの領域では、経皮吸収を利用した化粧品や美容液が多く販売されています。
ビタミンCやヒアルロン酸などの成分は、皮膚に浸透しやすく、シミやシワの改善、保湿効果が期待できます。
また、ナノテクノロジーを活用することで、有効成分の浸透性を高める工夫も進められており、さまざまな研究が行われています。
主な製品としては、美容液やクリーム、シワ改善パッチ、コラーゲンパッチなどがあります。
経皮吸収のヘルスケア・ウェルネス領域としての効果
ヘルスケアやウェルネスの分野でも、経皮吸収の技術が応用されています。
例えば、CBDオイル(カンナビジオール)を含むパッチや、マグネシウムを補給するためのクリームやバームなどがあります。
これらの製品は、皮膚を通じて成分が体内に吸収され、筋肉の緊張をほぐし、リラックス効果を促すとされていて、プロスポーツ選手や健康意識の高い人の間で注目を集めています。
製品で言うと、アロマオイルやエプソムソルト、マグネシウムやCBDが配合されたクリームなどが該当すると言えるでしょう。


経皮吸収の効果を示す最新エビデンス(論文)を紹介

ここでは経皮吸収の効果を示す海外の最新エビデンス(論文)を3つご紹介します。
一つずつ順番に確認していきましょう。
経皮吸収の効果を示す最新エビデンス(論文)「エプソムソルトの効果」
2024年9月に発表されたこちらの論文には、マグネシウムを含むエプソムソルトの経皮吸収による効果が記載されています。
“In medicine, epsom salt is known for its muscle-relaxing effects, making it a popular
choice for treating discomfort, tension, and stress.
Epsom salt’s magnesium content is thought to play an important role in inducing
muscular relaxation and lowering inflammation, making it a helpful adjunct therapy for illnesses like muscle cramps and fibromyalgia.”
「医療分野では、エプソムソルトは筋肉の弛緩作用で知られており、不快感、緊張、ストレスの緩和に広く使用されています。
特に、マグネシウムが豊富に含まれていることから、筋肉の弛緩を促し、炎症を抑える重要な役割を果たすと考えられています。
そのため、筋肉のけいれんや線維筋痛症などの疾患に対する補助療法として有用であるとされ、症状の緩和に貢献する可能性が示唆されています」
引用:Analysing the Therapeutic Potential of Epsom Salt across Multiple Human Physiological Systems: A Comprehensive Review|Journal of Clinical and Diagnostic Research
エプソムソルトは、日本ではまだそこまで広く普及していませんが、海外では古くから一般的な入浴剤として広く使用されています。
特に欧米では、最もポピュラーなバスソルトとして親しまれていて、美容やリラクゼーションの目的で利用する方も多いです。

経皮吸収の効果を示す最新エビデンス(論文)「経皮吸収と経口投与の効果比較」
こちらは2010年に発表された研究にはなりますが、経皮吸収の効果をわかりやすく示す事例として紹介します。
がん性疼痛に対する経皮吸収と経口投与の有効性と副作用について | |
調査対象 | 中等度から重度のがん性疼痛治療中の中国人の患者、2651名(合計32件の研究が本研究に組み入れられた) |
調査方法 | 経皮フェンタニル(経皮吸収の薬)と経口モルヒネ(飲み薬)を比べた複数の研究をまとめて解析し、効果や副作用、患者さんの生活の質(QOL)を調べる。 |
解析結果 | ・経皮フェンタニルと経口モルヒネの両方とも、約8〜9割の患者さんの痛みを和らげられたが、統計的に大きな差は生じなかった。 ・経皮フェンタニル(経皮吸収)のほうが便秘・吐き気/嘔吐・めまい/眠気といった副作用が少なく、QOL(生活の質)も向上する可能性があるという結果が出た。 |
副作用が経皮フェンタニル(経皮吸収)のほうが少ない理由は、飲み薬に比べて消化管や全身への負担が軽減されるからだと考えられます。
経皮吸収の効果を示す最新エビデンス(論文)「経皮吸収の効果と将来性」
2022年に発表された以下の論文では、経皮吸収によって薬物を体内に送達する方法(TDDS)が効果的であることを示唆しています。
“Upon exhaustive research, the transdermal drug delivery system (TDDS) has appeared as a potential, well-accepted, and popular approach to a novel drug delivery system.
Ease of administration, easy handling, minimum systemic exposure, least discomfort, broad flexibility and tunability, controlled release, prolonged therapeutic effect, and many more perks make it a promising approach for effective drug delivery.”
「研究を重ねた経た結果、経皮的薬物送達システム(TDDS)は、新たな薬物送達システムとして有望であり、広く受け入れられ、人気のあるアプローチとして受け入れられるようになってきました。
投与の容易さ、取り扱いの簡便さ、副作用が最小限であること、苦痛が少ないこと、薬の投与量や頻度、放出する速度を簡単に変更できる点、薬が時間をかけてゆっくり放出されること、持続する治療効果など、数多くの利点により、効果的な薬物送達法として将来性が期待されています。
引用:Overcoming skin barriers through advanced transdermal drug delivery approaches|PubMed
ただし、同論文では経皮吸収の主な課題として「皮膚の透過性が低いこと」も挙げており、皮膚が薬を吸収しにくいという問題を解決し、薬がしっかり効くようにするためのさまざまな方法をあらゆる側面から探求する必要があると結論づけています。
経皮吸収のメリットと3つの効果

経皮吸収の主な3つのメリットを挙げるとすると、以下のような効果が期待できます。
- 胃腸への負担が少ない
- 持続的な成分供給ができる
- ピンポイントで治療が可能
それぞれ解説します。
胃腸への負担が少ない
経口摂取の場合、成分は胃や腸で吸収され、肝臓で代謝されてしまうため、その一部が分解されてしまいます。
一方、経皮吸収では、消化器官を通らず直接血流や局所組織に作用するため、吸収効率を高めながら胃腸への負担を軽減できるとされています。
成分によって到達する領域は異なるため、経皮吸収を謳っている商品などを使用する際は確認してみましょう。
持続的な成分供給ができる
経皮吸収用の製品は、パッチやクリーム、ジェルなどの形態で少しずつ成分を放出しながら、長時間にわたって効果を発揮します。
そのため、血中濃度の急激な変化を避けながら、より安定した効果を持続させられるため、慢性的な疾患管理や健康維持には非常に有効です。
ピンポイントで治療が可能
経皮吸収の大きなメリットは、ピンポイントで患部に直接作用させられる点です。
例えば、湿布やマグネシウムバーム、CBDクリームなどは、筋肉や関節の痛みを和らげるために局所的に使用でき、即効性や持続性を発揮します。
また、スキンケアの分野では、ビタミンAやビタミンCを含む美容クリームを肌の気になる箇所に直接塗ることで成分が角質層に浸透し、エイジングケアや美白効果をもたらすと考えられています。

栄養医学において、一般的な経験則として、薬やサプリメントに有効な効果がなければ、患者が「効果を感じない」と報告した時点で医療従事者は使用を中止することが多いです。
しかし、経皮マグネシウムは100年以上の長い使用実績があり、その効果が問題視されたことはありません。
マグネシウムの皮膚からの吸収は主に毛穴を通じて行われますが、一部は皮膚表面から直接浸透する形で吸収されます。
皮膚からのマグネシウム吸収は、経口摂取や静脈内投与ほど速くはありませんが、バームの成分が皮膚の保湿バリア機能を回復させるため、マグネシウムイオンが皮膚上に長く留まり、エプソムソルトの入浴よりも持続的な吸収が可能になります。
【注意】経皮吸収の効果にも限界がある
ここまで経皮吸収のすぐれた効果について見てきましたが、もちろん、経皮吸収には限界もあります。
私たちの皮膚に備わっているバリア機能によって、大きな分子量の成分や水溶性の成分、角層が厚い部分(手のひらや足裏)には成分が吸収されにくく、効果が出にくいとされています。
また、吸収率には個人差があり、体調や使用方法によっても変動するため、適切な製品選びと正しい使用方法が重要です。
まとめ:科学的に証明された経皮吸収の効果に目を向けよう!
今回は経皮吸収の基本的な知識や効果について、エビデンスとなる論文を紹介しながら科学的に解説してきました。
経皮吸収は、医薬品、美容、ウェルネスの分野で幅広く活用されており、最新の研究でもその効果が証明されています。
経皮吸収の可能性に目を向け、適切に活用することで、あなたの健康や美容の向上にお役立てください。