経皮吸収(けいひきゅうしゅう)は、皮膚から直接成分を吸収する現象で、一般的には市販のスキンケア製品や医薬品などで「肌に塗るだけで成分が浸透する」「肌から吸収される」といった言葉でよく表現されています。
実際に、その成分はどのような仕組みで体に取り込まれるのか知っていますか?
本記事では、経皮吸収とはなにか、どのような成分が肌から吸収されやすいのかについて解説します。
経皮吸収とは?

経皮吸収とは、皮膚に塗布した物質が皮膚組織を透過して体内に取り込まれる現象を指します。
化粧品や医薬品、湿布、アロマオイルなど、肌に塗る製品の多くが経皮吸収を利用して、体内の健康維持に役立っています。
成分を体内に取り入れる方法としては、固形物や粉末などを口から摂取する「経口摂取(けいこうせっしゅ)」が一般的です。
しかし、内容物によっては消化器官に負担がかかったり、効果が発揮されるまでに時間がかかる場合があります。
その点、経皮吸収は胃や腸を通さずに直接体内に成分が届くという特徴を持ち、消化器官への負担が少なく、成分によっては即効性も期待できます。
では、経皮吸収でどのように成分が体内に吸収されるのでしょうか。
次章で解説します。
経皮吸収のメカニズムとは?

経皮吸収がどのように起こるのかについて、まず皮膚の構造や吸収の仕組みの理解が大切です。
以下、2つの経皮吸収が起こるメカニズムを解説します。
- 皮膚の構造と経皮吸収の関係
- 経皮吸収の3つの経路
皮膚の構造と経皮吸収の関係
皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3つの層から構成されており、このうち経皮吸収に関わるのは表皮の最外層にある「角質層」です。
角質層は、外部からの異物の侵入や刺激から身体を守り、水分を逃がさないようにする役割を果たしています。
しかし、角質層の構造はレンガのような「ラメラ構造」になっており、一部の成分はこのすき間を通って体内へ浸透します。
角質層を通過しやすい成分は、脂溶性の成分(油に溶けやすいもの)や分子が小さい成分で、反対に水溶性の成分や分子が大きい成分は浸透しにくい傾向があります。
経皮吸収の3つの経路
経皮吸収には、成分が皮膚を通過する「付属器官経路」「細胞間隙経路」「細胞実質透過経路」の3つの経路が存在します。
これら3つの経路を通じて、成分は皮膚の奥へと進んでいきますが、どの経路を使うかは成分の性質や皮膚の状態によって変わります。
毛穴や汗腺といった皮膚の開口部を通るルート。
水溶性の成分でも吸収される可能性があるのが特徴。
皮膚の一番外側にある角質層の細胞と細胞の間を抜けていくルート。
この脂質の間をすり抜けるようにして、成分が浸透していく仕組みとなっている。
角質細胞の内部を通り抜けるルート。
細胞膜を何度も通過する必要があるため、吸収されるスピードはゆっくり。
経皮吸収の部位ごとの吸収率は?

経皮吸収のしやすさは、体のどの部分に成分を塗るかによって大きく変わります。
皮膚の厚さや血流の量が異なるため、吸収率にも差が生じ、皮膚の状態や環境によっても吸収の度合いが変わるため、適切な使用が大切です。
本章では、以下、2点の経皮吸収率について解説します。
- 体の部位ごとの吸収率
- 皮膚の状態や使用環境で経皮吸収率は変わる
体の部位ごとの吸収率
経皮吸収のしやすさは、体のどの部分に塗るかによって大きく変わります。
一般的に、腕の内側を基準(1.0)とした場合の吸収率を以下表にまとめました。
体の部位ごとの経皮吸収率
体の部位 | 吸収率(腕の内側を1.0とした場合) |
---|---|
頭皮 | 3.5倍 |
額 | 6倍 |
あご | 13倍 |
わきの下 | 3.6倍 |
手のひら | 0.83倍 |
性器 | 42倍 |
かかと | 0.14倍 |
背中 | 1.7倍 |
経皮吸収は、皮膚が薄い部分ほど吸収されやすく、厚い部分ほど吸収されにくい傾向があるため、スキンケアや医薬品を使う際は、どの部位に塗ると効果的か意識して使用するとよいでしょう。
皮膚の状態や使用環境で経皮吸収率は変わる
経皮吸収率は、皮膚の状態や使用環境によっても変化します。
皮膚が健康でバリア機能が正常に働いている場合、異物の吸収は抑えられますが、傷や炎症があると吸収率が高まります。
また、気温や湿度も経皮吸収に影響を与える要因です。
温度が高いと皮膚の血流が増加し、吸収される成分の運搬が速くなる場合があり、反対に、寒冷環境では血流が減少し、吸収率が低下する可能性があります。
さらに、塗布する物質の種類や濃度、基剤の性質も重要な要素です。
油溶性成分は皮膚の脂質層になじみやすく、より深く浸透する可能性があります。
経皮吸収を使用する際は、部位ごとの吸収率や使用環境による要因を総合的に考え、適切かつ効果的な使用が重要です。

クリニックにおいて、リポソーム製剤が広く普及する前は、ミネラルやビタミンの経皮吸収は、脂溶性クリームやDMSO(ジメチルスルホキシド)との併用によって行われていました。脂溶性クリームは、皮膚のバリア機能を高め、微細な水分層を長時間保持することができるため、高い効果を発揮していました。
この方法の唯一の欠点は、クリームに添加物や防腐剤が含まれている場合、それが皮膚刺激やアレルギー反応を引き起こす可能性がある点です。
DMSOを併用することで吸収率は向上しますが、一時的なかゆみを引き起こす傾向があり、この点を不快に感じる方もいます。
リポソーム製剤は、ミネラル、ビタミン、医薬品の経皮吸収において、優れた製剤の一つと考えられています。
経皮吸収率が高い成分・低い成分とその違い

経皮吸収率は成分の性質によって、吸収率が高い成分と低い成分があります。
分子量が小さく、脂溶性が高い成分ほど皮膚を通過しやすいため、経皮吸収率が高く、分子量が大きく、水溶性の成分は皮膚バリアを通過しにくく、経皮吸収率が低くなります。
経皮吸収率の高い成分、低い成分について、以下表にまとめてみました。
経皮吸収率の高い成分
性質 | 特徴 | 主な成分 |
---|---|---|
脂溶性の高い成分 | 皮膚の脂質層になじみやすく、スムーズに浸透 | エストロゲンニコチンカフェイン |
分子量が小さい成分 | 皮膚の細胞間を通過しやすく、短時間で吸収 | ステロイドホルモンエタノール |
揮発性や浸透性の高い溶媒を含む成分 | 他の成分の吸収を助ける働きがある | ジメチルスルホキシド〈DMSO |
経皮吸収率の低い成分
性質 | 特徴 | 主な成分 |
---|---|---|
水溶性の高い成分 | 皮膚の脂質バリアに阻まれ、浸透しにくい傾向がある | アミノ酸ペプチドビタミンC |
分子量が大きい成分 | 皮膚の細胞間を通過しにくく、主に表面に留まる | コラーゲンヒアルロン酸 |
イオン化しやすい成分 | 皮膚のバリア機能により吸収が制限される | 一部の医薬品 |
昨今では経皮吸収率が低い成分でも、経皮吸収を高めるため、リポソームやナノカプセル化などの技術が活用されており、湿布や経皮パッチなどの製剤では、吸収を促進する基剤や浸透促進剤が用いられる場合もあります。

経皮吸収とミネラルの関係性

私たちの健康維持に欠かせないミネラルですが、果たして、経皮吸収でも体内に取り込めるのでしょうか。
本章では、次の3つの項目を解説します。
- ミネラルは経皮吸収されるのか?
- 経皮吸収されやすいミネラルとは?
- 経皮吸収からミネラルを摂取する方法
ミネラルは経皮吸収されるのか?
ミネラルの経皮吸収は、その種類や分子の性質によって異なります。
皮膚はバリア機能が強いため、大きな分子や水溶性の成分は吸収されにくいとされていますが、一部のミネラルはイオン化しやすく、特定の条件下では皮膚を通じて体内に取り込まれる可能性があります。
また、ミネラルの経皮吸収を高めるためには、皮膚の状態や使用する製品の成分、塗布方法などが非常に大事です。
経皮吸収されやすいミネラルとは?
ミネラルの中でも、特に経皮吸収されやすいとされるのはマグネシウムやセレンなどの小さなイオン化しやすい成分です。
マグネシウムは、経皮吸収が期待される代表的なミネラルです。
エプソムソルト(硫酸マグネシウム)やマグネシウムオイル(塩化マグネシウム)を肌に塗布したり、マグネシウムを含む入浴剤の使用で、皮膚を通じて体内に取り込まれるとされています。
セレンは抗酸化作用を持つミネラルで、一部のスキンケア製品に含まれています。
セレンが皮膚を通して吸収されると、細胞の酸化ストレスを軽減し、肌の健康をサポートする可能性があります。
亜鉛は皮膚の修復や抗炎症作用に関与する重要なミネラルです。
クリームやローションに含まれる方法での使用が多く、傷の治癒やニキビ対策に効果があるとされています。
ただし、経皮吸収の効率は比較的低いため、食事やサプリメントと併用するのが理想的です。
上記の3つのミネラルは皮膚のバリアを比較的通過しやすく、適切な形で使用すれば一定量が体内に取り込まれる可能性があります。
経皮吸収からミネラルを摂取する方法
経皮吸収を利用してミネラルを摂取するには、適切な製品や方法の選定が大切です。
代表的な摂取方法は次のとおりです。
亜鉛やセレンなどのミネラルが配合されたクリームやローションは、肌の健康をサポートする目的で使用されます。
マグネシウムオイル(塩化マグネシウムを水に溶かしたもの)を直接肌に塗布して、マグネシウムを取り入れる方法です。
経皮パッチは、皮膚を通じて成分を長時間にわたり供給する方法です。
ミネラルを含むパッチ製品もあり、持続的に吸収を促します。
経皮吸収の副作用と注意点

経皮吸収は、体に必要な成分を効率よく取り入れる手段として利用されていますが、適切に使用しないと成分によっては、副作用を引き起こす可能性があります。
特に、敏感肌の人や長期間使用する場合には注意が必要です。
経皮吸収による代表的な副作用として、肌トラブルが挙げられます。
使用する成分によっては皮膚に刺激を与え、かぶれやかゆみ、発疹などの症状が現れる可能性が高く、敏感肌の人やアレルギー体質の人は、刺激の強い成分を含む製品を使用すると症状が悪化する場合があります。
新しい製品を使用する際には、腕の内側などに少量を塗布してパッチテストを行い、24時間様子を見て、アレルギー反応の有無を確認するとよいでしょう。
また、経皮吸収の特性上、有益な成分だけでなく有害な化学物質も同時に吸収されるリスクがあるため、添加物や防腐剤を含む製品には十分注意が必要です。
経皮吸収だからといって過剰に使用せず、適量を守って安全に活用しましょう。
まとめ|経皮吸収のメカニズムを理解して快活な健康生活を送る
経皮吸収は、皮膚を通じて成分を体内に取り入れる仕組みであり、医療や美容の分野で広く活用されています。
経皮吸収のメカニズムを正しく理解し、安全な方法で活用すれば、健康維持やリラクゼーション、美容など、さまざまな目的に役立ちます。
自分の体質やライフスタイルに合った使い方を取り入れ、快活な健康生活を目指しましょう。