マグネシウムは私たちの体内で、300〜600種類以上の酵素反応を助ける重要なミネラルです。
しかし、生活習慣や食習慣、環境の変化などによって、現代人のマグネシウム不足はよりいっそう深刻化してきており、慢性的なマグネシウム不足が問題視されています。
最新の研究では、マグネシウム不足がさまざまな症状や、病気のリスクを高めることが明らかになってきました。
今回はマグネシウム不足で病気のリスクが高まる理由や、起こりうる病気、マグネシウム不足を防ぐための効果的な摂取方法を解説します。
さらに、マグネシウムと病気のリスクの関係を証明する研究も紹介していきますので、ぜひ最後までお読みいただき、あなたの健康維持にお役立てください。
なぜマグネシウム不足が病気リスクを高めるのか?

「マグネシウム不足が病気リスクを高める」というメカニズムを理解するために、まずはマグネシウムが体内でどのような働きをするミネラルなのかを知っておきましょう。
マグネシウムとは
マグネシウムは人体で5番目(※)に多く存在するミネラルであり、600種類以上の酵素の働きを助ける役割を担っています。(所説あり、4番目という研究もあります。)
(※)重量順。1位はカルシウム、2位はリン、3位はカリウム、4位はナトリウム。
また、エネルギー代謝や神経伝達、筋肉の収縮・弛緩など、多岐にわたる生理機能に関与しており、私たちが健康を維持していくうえで必要不可欠なミネラルです。
マグネシウムは骨と筋肉に約80%、残りの約20%は細胞や血液に存在しています。
マグネシウムの働き
具体的なマグネシウムの働きを示したのが、以下の一覧です。
マグネシウムの働き | マグネシウムの効果 | 詳細 |
---|---|---|
エネルギーの代謝 | ATP(アデノシン三リンサン)の活性化 | エネルギー産生の鍵となるATPの活性化を助ける。 |
神経伝達の調整 | 神経伝達の正常化 | カルシウムと連携し、神経の興奮を抑え、リラックス効果をもたらす。 |
筋肉の調整 | 筋肉の収縮と弛緩 | カルシウムとともに筋肉の痙攣(けいれん)防止や、こむら返りの予防に役立つ。 |
血圧の調整 | 血管系の健康維持 | 血管を拡張し、血流をスムーズにすることで高血圧の予防に寄与する。 |
カルシウムの代謝調整 | 骨と歯の強度維持 | カルシウムとともに骨や歯の強度を保つ。骨粗しょう症予防にも貢献する。 |
糖の代謝 | インスリンの働きをサポート | 糖尿病のリスク低減に関与し、血糖値を適切に維持する。 |
抗ストレス作用 | 自律神経の安定化 | ストレスホルモンの分泌を調整し、リラックス効果をもたらす。 |
睡眠の質向上 | メラトニン分泌の促進 | 体内時計を整え、深い睡眠をサポートする。 |
肌の保湿 | 皮膚のバリア機能強化 | 皮膚の細胞間脂質の生成を助け、肌の水分を保持する。 |
便秘改善 | 便の水分保持 | 水分を腸内に引き込み、便を柔らかくして排出しやすくする。 |
「えっ、こんなに!?」
そう思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マグネシウムは、実はこのように多種多様な生理的プロセスをサポートしており、私たちの健康と密接に関わっているのです。
マグネシウム不足によってリスクが高まる病気
私たちの体と心の健康に重要な影響を与えているマグネシウム。
それゆえ、マグネシウムが不足すると、以下のような健康問題を引き起こす可能性があります。
病気・症状 | 詳細 |
---|---|
高血圧・心疾患 | マグネシウムは血圧を正常に保つ働きがあるため、不足すると高血圧や動脈硬化のリスクが増します。 |
糖尿病 | インスリンの働きを助ける役割があるため、不足すると血糖値のコントロールが難しくなります。 |
骨粗しょう症 | カルシウムの代謝に関与し、不足すると骨密度が低下しやすくなります。 |
神経疾患 | マグネシウム不足はストレスや不安、うつ症状を引き起こす可能性があります。 |
不眠症 | メラトニン(睡眠ホルモン)の生成が低下し、寝つきが悪くなる。 |
頭痛・片頭痛 | 血管の収縮異常を引き起こし、片頭痛のリスクを増加させる。 |
ここに書いた病気・症状以外にも、マグネシウムの摂取不足で引き起こされると考えられる病気や症状があります。
より詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説しているので、ぜひ合わせてお読みください。

マグネシウムと病気リスクの関係を証明する研究

ここでは科学的にマグネシウムが病気のリスクに関係しているということを証明する2つの研究を紹介します。
- マグネシウム不足が「慢性変性疾患」のリスクを高める
- マグネシウム摂取量の増加が「虚血性心疾患」の発症リスクを低減する
それぞれの研究について、解説していきます。
マグネシウム不足が「慢性変性疾患」のリスクを高める
2024年12月、「European Journal of Nutrition」に掲載されたオーストラリアの研究
では、マグネシウム不足がDNA損傷や慢性変性疾患(※)のリスクを高めることが明らかになりました。
(※)慢性変性疾患:長い時間をかけて少しずつ体の細胞や組織が傷つき、元に戻らなくなる病気のこと。
“Scientists from the University of South Australia measured blood samples from 172 middle aged adults, finding a strong link between low magnesium levels and high amounts of a genotoxic amino acid called homocysteine.
This toxic combination damages the body’s genes, making people more susceptible to Alzheimer’s and Parkinson’s disease, gastrointestinal diseases, a range of cancers, and diabetes.”
「南オーストラリア大学の研究者たちは、172人の中年成人の血液を分析し、マグネシウムが不足している人ほど、遺伝子にダメージを与える「ホモシステイン」という有害なアミノ酸の量が多いことを発見しました。
この組み合わせは体の遺伝子を傷つけ、アルツハイマー病やパーキンソン病、消化器系の病気、がん、糖尿病などのリスクを高める可能性があります」
(中略)
“chronic magnesium deficiency is likely to disrupt the body’s ability to produce energy and power cells, causing accelerated tissue ageing and making people more susceptible to early onset of many diseases.”
「慢性的なマグネシウム不足は、体がエネルギーを作り出し、細胞を活性化させる力を低下させる可能性があります。その結果、組織の老化が早まり、多くの病気が通常より早く発症しやすくなります」
引用:Low magnesium levels increase disease risk, new study shows|University of South Australia website
マグネシウム摂取量の増加が「虚血性心疾患」の発症リスクを低減する
多目的コホート研究(JPHC研究)からの「食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患発症との関連について」の報告では、マグネシウム摂取量が多い人ほど虚血性心疾患(心筋梗塞など)のリスクが低いことが確認されています。
食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患発症との関連について | |
調査対象 | 岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎に在住していた、1995年と98年に45〜74歳だった男女8万5,293人 |
追跡調査期間 | 約15年 |
調査方法 | 食事からのマグネシウム摂取量を、アンケート調査の結果から少ない群から5等分に分け(Q1低、Q2、Q3、Q4、Q5高)、摂取量が一番少ない群(Q1)の発症率を基準とし、Q2からQ5群における循環器疾患(脳卒中及び虚血性心疾患)発症率を比較 |
解析結果 | 虚血性心疾患の発症リスクは、男女とも、食事からのマグネシウム摂取量が増えるほどリスクが低下する傾向がみられた |
参照:食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患発症との関連について|国立がん研究センター(がん対策研究所多目的コホート研究)
病気のリスクを減らすマグネシウム摂取法3選

マグネシウム不足を防ぎ、病気のリスクを低減するためには、「食事・サプリメント・経皮吸収」の3つの方法で効率よくマグネシウムを摂取することが重要です。
マグネシウムの摂取方法でもっとも自然で私たちの生活に取り入れやすいのは、食事からの摂取です。
ただ、普段からマグネシウムの摂取を意識して献立を考えたり、食事をしたりしている人はなかなかいないでしょう。
ですので、まずはどんな食品にマグネシウムが多く含まれているのかを知り、毎日ではなくても、意識して食事の中に少しでも取り入れることから始めてみてはいかがでしょうか?
マグネシウムは、海藻類(あおさ、あおのり)、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、葉物野菜(ほうれん草、ケール)、豆類(大豆、ひよこ豆)、魚介類(サバ、イワシ)などに豊富に含まれています。
日々の食事に積極的に取り入れていきましょう。
マグネシウムを豊富に含んだ食材をランキング形式で解説しているこちらの記事も、ご参考にしてください。

食事だけで十分なマグネシウムを摂取するのが難しい場合は、サプリメントを利用するのも有効です。
こちらの記事ではマグネシウムのおすすめサプリメントを紹介しているので、自分に合ったサプリメントを探してみるのもいいですね。

マグネシウムは皮膚からも吸収できるため、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)やマグネシウムを含んだクリーム・バームなども使ってみてもいいでしょう。
お風呂で体を温めることで血行が良くなったり、クリームやバームを直接肌に塗ってマッサージをすることで、リラックス効果も期待できます。
これらマグネシウムの摂取方法をまとめた完全ガイドも用意しています。
お読みいただければ、より理解が深まるはずです。


カナダのクリニックでは、心血管の健康を改善し、筋肉の損傷や痙攣(けいれん)による痛みを和らげるために、マグネシウムの補給推奨を行っていました。
さらに、マグネシウムがビタミンDの活性化に関与すると分かってからは、より積極的に推奨するようになりました。
日本と同様に、カナダでもビタミンD不足が一般的です。
そのため、骨粗しょう症、感染症への抵抗力低下、季節性うつ病などの予防・改善には、マグネシウムとビタミンDを一緒に摂るほうが、単独で摂取するより効果的とされています。
まとめ:マグネシウムを摂取して病気リスクを低減しよう!
今回はマグネシウムと病気のリスクの関係や起こりうる病気、マグネシウム不足を防ぐための効果的な摂取方法について解説してきました。
マグネシウムは私たちの健康にとって欠かせないミネラルであり、研究でもその効果は証明されてきています。
食事やサプリメント、経皮吸収などを活用して、日々の生活の中で意識的にマグネシウムを摂取し、病気にまけない健康な体を手に入れましょう!